【KIU BLOG】点P
数学が苦手だった。中学受験から大学受験に至るまでずっと数学に悩まされていた。試験では、数学の時間が一番緊張したし、一番点数が安定しなかった。入試に合格できたのも運良く問題が自分に合っていたからだと思う。別に論理的に考えることが苦手だったわけではない。理由は明白で、ただ答えを導出するまでの過程で、解法が思いつかない、計算ミスをする、分子と分母を逆にする、+と-を書き間違える、など、大小のミスを数えきれないほど起こして点を失っていたからだ。そんなことでと思われるかもしれないが、兎に角、変数と定数が支配するあの環境が苦手だった。そんな苦手な数学で私を付き纏っていたのが「点P」であった。そう、池の周りを周回したり、通学路を往復したり、図形の中をうろちょろするアレだ。点Pが動くだけで、点Pが動くだけなのに、初等幾何、関数、確率、ベクトルなど様々な分野が牙をむき、問題を一変させる。変数の代表格として、いつも私の前で動き続け、答案用紙へと向かう手を止まらせていた。サッカーも似ている。
ピッチの中で人・ボールが動く。それだけで得点、失点、ミス、怪我、審判の判断など様々な要素が生じて、状況が一変する。チームも似ている。
組織の中で人が動く。ボード上で名前の書かれたマグネットが動く。それだけで立場、評価が変わり、それぞれの状況に大きく作用する。サッカーに携わる以上チームの勝利を目指すし、それが必然的に解となる。
しかし、そこに現れる動く点は、数学のように規則正しくもないし、限られた種類しか出てくるわけでない。事実や過去のような定数も、見方や解釈によっては変化する変数として存在しうる。多くの人が、ものが動き続ける「点P」となり、私のサッカー人生に存在している。大学サッカー界に所属して、そうした変数は明らかに増えた。
厄介な難問だ。今までにないほど複雑かもしれないし、解き方すら見当つかないかもしれない。それでもやはり解を出したい。解を出した時の喜びを知っているから。日常生活で感情の起伏が少ない私にとってもそれだけは特別なものだ。
不思議と恐怖や苦手意識はない。解答用紙を前にして楽しみしかない。だからこそ、残り限られた時間、全力で難問に挑もう。自分の可能性という変数に向き合って。
3回生プレイヤー 鳥取政秀