【KIU BLOG】解
なぜ大学生にもなって週6でサッカーをしているのか。
KIUブログでも他大学の選手のブログでも語られつくしたありきたりな問いであると同時に僕があまり好きでない問いである。
「君はなぜ生きているのか」という答えがない問いのようで考えれば考えるほど馬鹿げているように感じる。
多くの選手がこの問いに与える解は「好きだから」というものだが、これは僕にはしっくりこない。サッカーを愛する方法は一つじゃない。
ゴール裏で応援する熱狂的なファン、サークルで週一回サッカーを楽しむ彼らもサッカーを愛しているはずだ。
サッカーが好きであれば週6でサッカーをしなければいけないわけではないし、週6でサッカーをしていることが彼らよりサッカーが好きであることの証明にもならない。
したがって、「好きだから」は僕にとってはこの問いの解にはなり得ない。
よく目にする解としては「プロになりたいから」というものもある。
これは非常に筋の通った解である。
プロになりたければ自明に相当な努力が必要であるから、大学に通いながら週6でサッカーをするのも合点がいく。
しかし、僕はプロサッカー選手を目指しているわけではない。したがって「プロになりたいから」も僕にとってはこの問いの解にはなり得ない。
非常に困った。
僕には大学生にもなって週6でサッカーをする合理的な解が思いつかない。
そもそも部活に入るときに大義名分なんて用意していなかった。
今までやってきて、辞める理由がなかったと言ってしまえばそれまでである。
確かにサッカーは面白いし、チームが好きだし、点を決めることができたら気持ちがいいし。
このままあと2年続けて、引退して、就活でちょっと下駄をはかせてもらうか。
そんなことを漠然と考えていた時だった。
親友が大怪我をした。
前十字靭帯断裂。全治一年。
リーグ戦のベンチ外だった僕は怪我でリーグ戦後の練習試合にも出られないから、練習試合組のアップを見守りながらリーグ戦を見ていた。
彼は僕の目の前で倒れこんで動けなくなった。
試合後に彼のもとに行ってみたが、かける言葉がなかった。
試合には敗れてチームの雰囲気は険悪、担架の上の彼を見てみると痛みのせいか悔しさのせいか震えていた。
自分の頭に浮かぶどんななぐさめの言葉でさえも役立たずに思えて、ただ黙って自分の力のなさを恥じるしかなかった。
僕はベンチに入っていなかったから彼の代わりに戦うこともできず、治療することも、声をかけることさえもできなかった。
彼は京大のエースで、誰もが彼の得点に期待をしていた。彼が背負ってきた責任は計り知れない。
その重すぎる責任を今は別の誰かが背負わなければいけない。
大言壮語が許されるならば、その責任の一部は僕が背負いたい。
春先にした怪我が治って僕は少しずつトップチームでの出場機会を得ることができた。
やっと同じ景色が見れたと思った。と、同時に彼が平気そうに背負っていた責任の重さを知った。
あの時何もできなかった僕にできることはこの責任を少しでも果たすことだろう。
そのためには毎日サッカーと向き合い続けなければいけない。
だから、大学生にもなって週6でサッカーをする。
後付けの理由かもしれないが、これが僕にとっての解である。
彼の戻る場所は守らなくちゃいけない。
三部優勝を果たすには誰かが彼の背負っていた責任を肩代わりしなくちゃいけない。
そして、それをすべきなのは僕である。
3回生プレイヤー 鬼頭幸