【部員ブログ】私、親友と思い人
どれだけ友人の少ない人間にも、一人ぐらいは親友がいる。
私にも思い当たるのが一人。
彼の穏和な性格やら、くっきりした目鼻立ちやらの話が、退屈極まりないのは百も承知。
したがって私は、彼が虜になったある女性との関係について、まだしも救われる話をする。
彼がその女性と出会ったのは、彼がまだ少年の時。
彼女の美しさは瞬く間に彼を魅了し、彼は幼心に彼女とのお付き合いを夢みる。
それはまるで、サッカーを始めたばかりの私が、プロを夢みるように。
二十歳になっても、彼の恋が進展することはない。
彼はとうの昔に彼女とのお付き合いを諦めていた。
彼女には、何十、何百という人が求婚するのである。
しかし彼女のことがどうしても頭から離れない。
稀ではあるが、昔馴染みに対する彼女のごく自然な微笑みが、彼を幸福へと導く。
彼は二度、彼女との関係を断とうとした。
彼女が微笑みすら見せなくなったからである。
彼女に向き合う資格が自分にはないと思ったからである。
多くの女性が他にもいることを知ったからである。
しかし彼は彼女の虜になり続けた。
ついには後進に、彼女に近づく方法を助言し始めるほどである。
彼は狂っている。
いや、彼女に魅了された者は狂っている。
いや、皆何かに狂っていないと生きていけない。
その何かが彼女で、彼は幸福なのである。
彼は狂っている。
彼は来月二十三歳になる。
彼女の微笑みが、彼を、あるいは彼の友人を、温かく包み、幸福へと導くことを、
私は親友として心から祈っている。
言わずもがな、彼は私、彼女は蹴球。(蛇足)
四回生プレーヤー 橋本晋太郎