【部員ブログ】モロヘイヤ
京都大学農学部4回生プレーヤーの吉岡俊輔です。
みなさん、モロヘイヤという野菜は食べたことがありますか?
中東、エジプト付近が原産地と言われており、独特な粘り気が特徴の野菜です。
日本ではあまりメジャーな野菜ではないので、食べたことがない方もいるかもしれませんが、夏になるとスーパーの片隅にちょこんと陳列されているのを見かけます。
モロヘイヤは非常に栄養価が高く、抗酸化作用のあるビタミンA、ビタミンC、ビタミンEを豊富に含み、特にビタミンAの含有量は野菜の中でもトップクラスに入ります。
また、モロヘイヤは乾燥に強く病害虫もつきにくいので栽培が比較的簡単で、家庭菜園で育てている方も多くいます。
このように、モロヘイヤは栄養価が高いかつ栽培が簡単というなかなか有能な野菜であることがわかってもらえたでしょうか。
なぜこのようなマイナーな野菜の話をするかというと、モロヘイヤは僕にとって、吉岡家の人にとって思い入れの深い野菜であるからです。
僕の父の実家は京都北部の海沿いにあり、僕が小学生の頃は毎年夏休みに遊びに行っていました。
父の実家には、父の兄の家族と祖父が住んでいて、僕はそこでサッカーをしたり、親戚の兄や姉と遊んでもらったりして時間を過ごしました。
中でも食事の時間は、親戚が集まることもあり普段めったに食べられない寿司などを出前で取ってくれるので、いつも楽しみにしていました。
が、なぜか毎食大量のモロヘイヤも一緒に食卓に出現してくるのです。なんでも祖父が畑から大量に収穫してくるのだとか。
祖父は「健康にええから」と、もはや逆に健康によくないんじゃないかという量のモロヘイヤを一同に勧めてきました。そして、言葉数の少ない祖父はそれを黙ってみながら、自分は酒を飲んで、早々に自室に戻って就寝するのです。
親戚一同は、祖父が大量のモロヘイヤを収穫して食わせようとしてくるので、祖父はモロヘイヤを初めて日本へと伝えた人物に違いない、と言っていました。僕も当時は「へー、そうなんだ」と思っていましたが、今は「たぶん違うやろな」と理解しています。
そんな祖父との思い出の中で、とある夏の日に祖父の畑を訪れた時のことをよく覚えています。
祖父は、畳屋をやっていましたが、その仕事を辞めた後は、家の近所の小さな畑で野菜を栽培し、その隣の小さな小屋で日中の時間を過ごしていました。
その日は祖父に忘れ物を届けに行くということで、小学生の僕は父に連れられて祖父の畑に行きました。日本海側の夏は、直射日光が厳しくうだるような暑さでした。
僕は一刻も早く祖父のいる小屋に行って中で涼を取りたい一心で、急いで小屋に向かい、扉を開けました。
中で祖父が理科室にあるストーブをガンガンにつけていました。
小学生の僕はうろたえました。なぜなら、涼もうと思っていた小屋の中がサウナ状態だったから。
祖父は僕に気づくと、まるで何事もないかのように「おお、来たか」と言わんばかりのナチュラルな表情を見せてくれました。
そしてお昼時になるとイノシシからとったスープで、何うどんと呼べばいいのかわからない、あつあつのうどんを作って食べていました。
さすがに祖父も暑いのか、ストーブは付けたままなので何の意味もありませんが、扇風機を回していました。
僕は、扇風機から送られる熱風が顔に当たる中、幼心に「じいちゃんは一体この小屋で何がしたいのだろう?」と素朴な疑問を感じたことをよく覚えています。
祖父が何を意図していたのか、未だによくわかりません。笑
祖父はよく小屋をサウナにするようで、親戚の一人は、祖父がすこしアラブ系の顔立ちをしているため、祖父はあの小屋で中東の気候を再現して故郷を思い出しているのだという説を提唱していました。
もし、そうだとすると祖父は間違っていたと思います。中東はもっとずっと、住みよい場所のはずです。
こういう事が他にもいろいろあったので、僕はモロヘイヤを見るとこの風変わりな祖父のことを思い出します。きっと吉岡家の人たちは全員そうだと思います。
ところで、全く自覚がないのですが、どうやら最近僕の言動がどんどんかつての祖父に近づいていってるそうなのです。
近頃の僕が祖父の姿に重なると親戚の人によく言われます。
今の僕なら、きっと祖父のいい話し相手になっていただろうと母も言います。
僕も、この一風変わった祖父ともっと話をしておけば楽しかっただろうなと、今さらながら後悔しています。
当時の幼い僕は祖父の奇行の数々を見て、おもしろいというより恐怖が勝ってしまいました。(まあ、それも仕方の無いことだと思います。笑)
ただ現在、僕が大学に行けて勉強やサッカーをできているのは、ひとえにそんな祖父のおかげでもあります。というのも、僕の祖父は孫の代のために貯金をしてくれていました。畳屋を営んでいた祖父が地道にこつこつ貯めたものなのだと思います。僕が大学に行くためのお金の一部は、祖父が僕に残してくれていたものです。
そして、これだけでなく、まだまだ僕の気づいていないところで、たくさんたくさん僕を支えてくれていたのだと思います。
だから、今の僕があるのは祖父のおかげでもあります。何より僕は、一見風変わりですが、愛情にあふれた祖父を持てて嬉しいし、誇らしく思います。
僕は、祖父に大きな恩があります。そして、このもらった恩を少しでも祖父に返したいと思っています。
何をしたらいいでしょうかね。
なんやろな。
将来、モロヘイヤの研究をしてみるとか?
うん、それがええな。
じいちゃんもたぶん喜んでくれるんちゃうかな。
4回生プレーヤー 吉岡俊輔