【KIU BLOG】苦と喜
3回生の夏。
セミが鳴いている。京都の夏は暑い。自転車を漕いで僕はいつものグラウンドへと向かった。
その日の練習は紅白戦だった。いつも自分のマグネットが貼られている場所に自分のマグネットは貼られていなかった。それは自分の序列の後退を意味した。
そしてそれ以降、公式戦のメンバーにも選ばれなくなった。
トップチームの試合でも自分の実力を発揮する自信があっただけに不服だった。様々なことに「?」が浮かんだ。主将の説明も判然としなかった。
自主練の時間を増やし、練習にも色んなことに気を配って自分の中では意識高く臨んだ。
するとBチームの公式戦では手応えがあった。
しかし状況は変わらず、自分が頑張るほどに疑問は大きくなり、それは疑問から不満に変わった。
次第に矢印は自分ではなく、他人に向くようになった。あんなに好きだったサッカーも好きじゃなくなっていった。部員の誰とも喋らず練習も適当にこなした。当時の主将の批判もした。無気力になり、就活等のサッカー以外の自分がやらなくてはならないことにも手がつかなかった。
そしてそのままシーズンが終わった。自分の代へと向かう中で最悪の終わり方だった。
もちろん後悔もあった。
本気でサッカーに向き合っていれば苦しいことがあるのなんか当たり前だった。多くの部員が苦しみを抱えながらもサッカーをしていた。
そんな中でそれに耐えられない自分。自分がチームの誰よりもガキだと分かったし、チームに大きな迷惑をかけた。そんな自分がこのままチームにいていいのか。辞めるべきなんじゃないのか。
シーズンオフの間、そんなことを考えていると同期からの電話が鳴った。内容はただの業務連絡だったが、電話の切り際こう言われた。
「俺は昂太郎と一緒に試合に出たい。だから頑張ろう。」
「うん。ありがとう。」
驚きのあまり素っ気ない返事だった。
あんな自分勝手な行動をとった自分と一緒にサッカーをしたいと言ってくれる仲間が1人でもいる。その事実が、その言葉が僕を救い、サッカー選手としてのスタートラインにもう一度立たせてくれた。
自分の代になり、ボールを繋いで攻撃をデザインしていこうと決まった。
チームの志向するサッカーと自分のプレースタイルの相性は決して良くなかった。自分の持ち味をあまり出せず、試合に出られない日々が続いた。正直自分に合わない戦術で嫌だったし苦しかった。
そんな時、自分と同じ境遇においてもブレず、ひたむきな仲間が目に入った。だから自分も頑張ることが出来た。
すると運良くリーグ戦出場が叶った。デビュー戦はなんとか勝利できた。
前期リーグ終盤にはクリーンシートでの4連勝も飾った。
双青戦は多くの観客が見守る中、完勝だった。普段ゴールが決まっても1人で喜ぶ自分も、この日だけは応援のみんなと喜びを分ち合った。
どれも自分がチームにいていいのか悩んでいた時には考えられない歓喜だった。
悩み、葛藤、苦しみ、不満。それらを乗り越えた先に歓喜が存在する。それらを乗り越えるために仲間がいる。きっとそういうこと。
現状苦しいチーム状況である。後期開幕2試合で勝点1。あまりに苦く、痛い敗戦とドロー。
でもきっとこれも乗り越えれば歓喜が待っている。
来たる11月11日。その日が最高の日になるように。
チームが苦しい時に自分が最後尾からみんなを支えられるように。
今日も僕は僕を支える仲間が待つグラウンドへ行くのである。
4回生プレーヤー 松島昂太郎