【部員ブログ】藤色と濃青
日暮と共に肌を切る冷たい風に秋の訪れを感じる。
気付けば10月、永く続いたサッカー人生も残すところ2ヶ月足らず。当たり前のように練習に行き、過剰の睡眠と栄養を摂取する日々も近く終わりを迎える。
思えば15年前、サッカーをはじめたあの日に夢見ていた。
いつの日か自分はプロサッカー選手として活躍していると。憧れの藤枝東高校のユニフォームを着て国立の舞台で躍動していると。
そんな理想は白昼の夢と儚く消え、苦節15年、わずかな成功と数えきれぬ挫折。手の届かぬ高い壁の数々。もうサッカーはしないと誓った高校サッカーの引退。大学に入ったら留学をしよう。言語を学ぼう。サッカー以外のことをたくさんしよう。
そんな思いは大学入学後早々にして、小さなボールと大きなピッチの前に消えた。22歳の今でも懲りずにボールを追いかけているのは、振り向いてくれないサッカーへのある種の執着かもしれない。
でも、そんな執着が、年齢だけは立派な大人の最後の悪あがきが、文字通りサッカー人生の最期にふさわしい最高の機会をくれた。1つの試合に、1つのプレーに一喜一憂できる。その一瞬を本気で分かち合える仲間がいる。高め合えるライバルと、越えるべき壁がある。
そんな京大サッカー部で最後に成し遂げたい昇格という目標。毎年、今年こそはと意気込むも未だ成せず。4度目の挑戦となる今年も決して順調とはいえない。
でも、立ち止まるわけにも、振り返るわけにもいかない。結果が出なくても、どんなに苦しくても、主将として前に進み続ける。そんなエネルギーをくれるのは共に闘うチームメイト。大好きなこの仲間と最後に歓喜するために全てを尽くす。
サッカー人生を振り返ると数々のハイライト。小学生の頃、地元少年団で25年ぶりの県大会出場がかかったPK戦。憧れのチームのセレクション。どうしても敵わない相手を知った中学や高校。スタンドから見つめた高校最後の大会。
それらに勝るとも劣らない鮮やかな彩が大学サッカーには、京都大学サッカー部にはある。サッカーを通じて、たくさん喜び、怒り、哀しみ、泣いた。最後にもう一度笑うために、2ヶ月弱死ぬ気で闘おう。
憧れに触れた日。初めてボールを蹴った日。初めて挫折を経験した日。初めてゴールを決めた日。
あの日思い描いたサッカー人生とは少し違うけれど、今日ここでサッカーができる自分は幸せ者だと思う。そんな環境に、大好きな仲間に感謝しながら今日もグラウンドへと向かう。
四回生プレーヤー 田中啓史